2009年08月02日

最初に父が殺された

神秘の仏教国、カンボジアは東南アジアでも有数の食料自給率や、文明、高い教育の設置などで、豊かな国として知られていた。
アンジェリーナ・ジョリーの主演する【トゥームレイダー】の舞台になったりして、
現在も、アジアの魅力スポットとして、観光でも人気の国だと思う。
私も、いつかは一度は見てみたい国だ。

現在の日本から見ると、まだまだ発展途上国の東南アジアの一国に過ぎない、
と、思っている人たちは多いだろう。
80、90年代に生まれている人たちは、
日本は既に、経済大国、アジアのトップなどと思っている人たちも、
実に多いのではないか?

私ははっきりと覚えている。
TVニュースに写った、横たって死んだポル・ポトの映像。
映画【キリング・フィールド】の衝撃。

平和な日本で知ったカンボジアの惨劇を、部外者の私でもこれほどおののくのだから、
当時を生き抜いた人達の、壮絶な過去の経験は想像を絶する。

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私の生まれた頃には、ベトナム戦争やカンボジア内戦、クーデターの様子は、TVニュースでもやっていた。
が、子供には良く分からなかった。
しかし、著者のルオン・ウン女史は70年生まれだから、
当時の私より、まだ小さかった事になる。


最初に父が殺された―飢餓と虐殺の恐怖を越えて

最初に父が殺された―飢餓と虐殺の恐怖を越えて

  • 作者: ルオン・ウン
  • 出版社/メーカー: 無名舎
  • 発売日: 2000/09
  • メディア: 単行本





こんな小さな少女が1975年から始まった
至上最悪の、狂気極まる政権の下で生き延び、
成長してから、当時の現実を綴ったノンフィクション
【最初に父が殺された】は、人論を考える意味でも
是非、読むべきノンフィクションではないだろうか?

この本は先ず、女史の亡命先、アメリカから出版され、
2000年3月に、NHKのドキュメンタリー番組にもなっている。
私は、録画ビデオを見せてもらって知った。
同年9月には、翻訳され日本でも発売された。

【キリング・フィールド】を見ていたおかげで、
ポル・ポト政権や当時のカンボジアについての本等を、
少々なりとも読んでいたのだが、
いくら読んでみても、結局は支離滅裂な政権だったとしかいいようが無く、
政治的見解で論じている本は、理解できない難しさだったり、
あまりの凄まじさに読む事すら辛いものと、色々あるが、
ルオン女史の、この一冊は、未来のカンボジアに掛かる、確かな光のように感じた。
もちろん、当時の悲惨な経験も多々記されている。
ルオン女史の人間らしい憎悪と憎しみの感情も、
子供の視点からの感情だから、
かなり顕著に、直情的に文章にもしている。
だが、やはり、人が生きてゆける事は、家族や、人への愛情から叶う、
と、言う事も立証している。

当時、ルオン女史が5歳〜10歳位までの事だから、
明確に当時の状況を、記憶しているとは言い切れないが、
この本は、彼女の生き残った兄や姉、家族達の協力を得て出来た。
と、言われている。
特に尽力したのが、次男で、当時の状況の記憶を克明に記してくれたものが、基盤になっているそうだ。
次男が当時は16歳〜23歳だから、かなり、詳細に記憶している事が多いし、信憑性も充分だろう。
だから、本書の中で、プノンペン欠落の理由や、状況など
5歳の子供に把握できるはずも無い事も、明確に書かれている。
あの状況で、よく残せたな、と思う写真の数々も、
生き残った家族達の必死の思いだったのだろうな、
と、本当に胸が痛む。

解説者は言う『これは家族の物語だ』とも。
懸命に著者を育て上げた長男夫婦、著書に尽力した次男、
当時必死に家族を守ろうとした幼かった3男、
憎しみをいつも消し去るように生きている次女、
そして、著者の5人が生き残ったが、
彼らの両親や姉、妹は戻ってこない。
多くの亡くなられた人たちも。

それでも、ポル・ポト政権中の支配者だった人たちの一部は、
健在しているし、なおも国の要人となっている人もいる。
フン・セン首相だって、70年後半まではポル・ポト政権の指導者の一人だった。
国連裁判も決着は付いていない。
付いたとしても、誰も生き返れはしない。

が、ルオン・ウン女史は断固たる決着を付けている、と、思う。
今、生きている自分の使命を、実行していることで。

ルオン女史はVVAF、NGO等、各団体において
地雷廃絶などの活動を行っている。
2007年には日本にも来日していた。

その日本が、当時、ポル・ポト政権を承認し、支援していたことも、
きっと、彼女は知っているだろう。

ラベル:カンボジア
posted by みずほ at 18:50| 大阪 ☀| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月16日

毛沢東の私生活

私がまだ小さい子供の頃(小学校の3年位まで)父が定期購買で配達される本の中に【中国人民】とか【人民中国】とかいう雑誌があった。
正直タイトルは正確には覚えていないが、毛筆書体でタイトルが書かれた、雑誌で、紙も安物ぽくて、今から思い出してもそんな、立派な雑誌には見えないものだった。

父が共産党員だったとかそういうわけではない。
父は語学、文学を長年勉強していて、主にはフランス語だが、英語、スペイン語、韓国語、中国語と、かくいうバイリンガルなのだ。

父が結婚したのは学生運動のさなか、1960年代で、学生結婚だったが、当時から政治思想には全く興味が無く、頭の中は文学のみで、あらゆる文学を読む為、語学を必要としたところから、語学も勉強するようになったと聴いた。
今も、当時も変わらず、本と常にあり、組織社会的な面はほとんど持ち合わせていないような父なので、ちょこちょこ翻訳の仕事をしたりしながら、本と共に生きているような父である。

その雑誌を購買していた頃は中国語を勉強しているときだったのだろう。

我が家は中国とは少し関連がある。
母の生まれがハルビン(当時の満州)だったことが主な要因だろう。
1939年に生まれ1945〜1946年の間に帰国したというから、
7歳まで、中国のハルビンしか知らないことになる。
しかしながら、我が家にコミュニスト思想は全く無い。
そもそも、どんなものであれ、政治的思想が話題になったり、ましてや教育に組み込まれることが無い家庭だった。
中国での母の影響は【食卓の献立】や自然や芸術が占めていたし、
父は漢詩(父の祖父が漢文学者だったから)や文学に占められていたから、共産党という言葉すら、耳にすることは無く、
父が読む雑誌の表紙や写真に頻繁に出てくる人物が【毛沢東】という、中華人民共和国の偉大なる指導者ということも、後年歴史の授業で初めて知ったくらいだった。

雑誌は中国の情報誌のようなもので日本語だったが、私がもっぱら興味を持ったのは、写真に出てくる不思議な自然風景や地方独特の文化的街並みの情景、見た目でも違いが分かる少数民族の人たちの様子。ファンジックな京劇の様子などに心を魅かれた。

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ある時、母にすすめられて読んだ【ワイルドスワン】が毛沢東と文化大革命を知るきっかけとなる。

本書はベストセラーになり、著者の張戒女史は一躍時の人となり、
映画化もされた。

ついで、【毛沢東の私生活】を読むことになった。


毛沢東の私生活〈上〉 (文春文庫)

毛沢東の私生活〈上〉 (文春文庫)

  • 作者: 李 志綏
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1996/12
  • メディア: 文庫





毛沢東の私生活〈下〉 (文春文庫)

毛沢東の私生活〈下〉 (文春文庫)

  • 作者: 李 志綏
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1996/12
  • メディア: 文庫




本書は発売するや、大いに物議をかもしたとして、
大変な話題となったので、中国史などに詳しい方なら、当然読んでおられることと思う。
著者の李志綏史の不可解な死も物議論争に輪をかけた。

李志綏史が毛沢東の主治医として従事した、22年間の回想録で、毛沢東と中国共産党の暴露本でまあったため、中国では今もって、前者の【ワイルドスワン】と同じく刊行されていない。

この、ノンフィクションが信憑性の無い虚偽であるとして、批判、一蹴する論と、当時の状況からみても、大いに信憑性があり、文化革命中の中国の真実を見直すにあたって意味があるという論との、大きく対極する本だ。
この件に関して、論を述べている人のサイトを参考に読んでみた。なるほど、これほど、180度評価が分かれるものなのだなぁ、と、つい感心してしまった。
http://sing.edhs.yun.ac.jp/ad/murata/murata-lishidezhenshi/
http://www.owari.ne.jp/fukuzawa/moutaku.htm

個人的には、さほど信憑性に欠いてるとは思えない。
先ず、文革時代における混乱と多くの死者に対しての、党としての結論が出ていないのが、よく分からない。
文革当時は日中外交の問題があったからかもしれないが、日本サイドでも文革を賞賛しているふしがあったが、その後は手の平を返した批判が多く出ていることも解せない。

又、後に、【毛沢東の私生活】は虚偽とする暴露本【毛沢東の私生活の真実】がこちらは中国から出ている。
批判のなかでも、毛沢東の回想録はすでに多く出ているとしているが、
中国内で承認されたもののみを取り上げているとすれば、それは偏った視点に感じるが・・・
そもそも、国は国に都合の悪いものを存在させたくないに決まっているし、存在させれるとすれば、国にとって都合がよいものになるに決まっている。

正史だ何だと言っても、歴史をそのまま真実と受け止めるほど、
たとえ愚かな私でもそこまで初心ではないし、
歴史が国を誇示したり、又逆に都合に合わせて改竄したりと
、国威発揚に利用する面も多々あり、と、ある程度は納得している。
政治、統治に感情や人間性といったものは、別という考え方も存在していることも分かる。
が、人間性や、個人の尊重は、たとえ国家太平の為でも無視できないものであることも真実だろう。
人間性や人権を守りつつ、国を世界を発展させてゆくことが、永遠の課題なのだと私は思う。

確かに、本書の中で、やや、著者が美化したり、
正当化されているようなふしもあるし、
常に真実ばかりを語っているとまでは思わないが、
良心と保身の間で葛藤しているた事は真実味がある。
結果論として、彼が失意の人生を共産党政権の時代に生きた、
ということは、本当だろうと思う。
その部分では、【ワイルドスワン】でも同じだ。

著者が毛沢東の近くで生きたが、党員としての確固たる地位は無いに等しいのに対し、
張戒女史の父は古参の地方党幹部としての地位を持っていた。
しかし、前者は保身の道を、後者は自分の真意を訴える道を選ぶという、
相対するものだが、結局は失意のまま人生を過ごしたことは同じだ。

救いは、娘である著者の張女子が作家という夢を実現し、母が父の汚名を返上するという勝利があったところだ。

そもそもからして
『国家の為、古い思想を消し去る為、あらゆるものを破壊し、党・もしくは毛沢東の思想、及び、それらが認める思想しか存在してはならない』
なんて考え方が正しいとは子供にも思えない。
稚拙ではあるが、それが読書感想の全てを修訳したように思う。


ワイルド・スワン〈上〉 (講談社文庫)

ワイルド・スワン〈上〉 (講談社文庫)

  • 作者: ユン チアン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫


  
ワイルド・スワン〈中〉 (講談社文庫)

ワイルド・スワン〈中〉 (講談社文庫)

  • 作者: ユン チアン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1998/02
  • メディア: 文庫


  
ワイルド・スワン〈下〉 (講談社文庫)

ワイルド・スワン〈下〉 (講談社文庫)

  • 作者: ユン チアン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1998/02
  • メディア: 文庫




posted by みずほ at 12:45| 大阪 ☀| Comment(0) | ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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