2010年03月14日

震える岩

3月になって初めての投稿
いやはや、日々の過ぎる事、早し!
気がつけばもう中盤ではないか。

最近は一日がとても早く感じる。
こうして、人間、年をとってゆくわけなのだなぁ。。。

年を重ねると、今までに無いような事をする事がある。
例えば、昔は嫌いだった食べ物が、あるときから好きになったり、
別段、気にも留めなかったようなことに執着したり・・・

我、亭主が突然
『本を読みたいけど、どれがおもろい?』
などと、言い出した。
亭主は活字嫌いの本嫌い、読み物はスポーツ新聞くらいの
不粋な男が、急に言い出したので、
『頭でも打ったか?』 『違う人格でも乗り移ってるのとちゃうか?』
と、不気味に思う。

まぁ、いいか、と、適当に(目の前にあったもの)を手渡す。

『すぐ、飽きるやろ』と、思っていたら、
『面白い!、もう読んでもうた! なんか他無いの?』
と、すっかりハマってしまった様子。

しかし・・・読むの早すぎないか?
『いやー、仕事中についつい・・・』
何と!仕事をさぼってたんか!
読書はいいけど、仕事してくれー
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亭主は歴史がすきだったらしいので、
時代小説とかはすんなり入れるだろうと思っていた。
そこで、最初はメジャーで、娯楽的なものと言えば、
やっぱり捕り物帳ではないだろうか。

『震える岩』

震える岩 霊験お初捕物控 (講談社文庫)

震える岩 霊験お初捕物控 (講談社文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/09/12
  • メディア: 文庫




模倣犯などでメジャーな作家、宮部みゆき史は、時代小説にも定評がある。

霊感少女、お初がヒロインとして活躍する捕り物帳で、
中短編集『かまいたち』にて既に登場するキャラクターだ。

だから、『震える岩』はお初シリーズとしては第3弾目にあたるが、
本格的にシリーズとして一人立ちした意味で1発目といえる。
メインキャラクターも算術マニアの青二才同心が新たに加わり、
更に、お初と微妙な心の関係で、コンビを組む。
やはり、ミステリや推理ものには、『ホームズ&ワトソン』的な
ペアが必須だ。

テーマも忠臣蔵で、歴史に疎くても入りやすい。
探偵が武道に優れているとか、知性教養に長けているとか、
そういうものでもなく、市井の年頃の、ちょっと勝気なお嬢さん。
父親との確執に悩みつつ、算術に情熱を燃やす、ひょろひょろの青年。
血のつながりが無いにもかかわらず、深い愛情でお初を育てた、
無骨で、真面目な岡引の兄と、優しい兄嫁。
珍話に目が無い、変この御前様などなど、
登場人物はやや、変わり者のところはあるものの、
基本的には普通の、心優しい人たちの集まりであるところが、
ほのぼのしてて、感じが良いし、
霊感という特殊能力というところも、捕り物としては新しい着想だ。

わりと、面白かったと思っている。

ただ、亭主曰く
『御前様が出てくると、話が長い!引っ張りすぎ! うざい』
御前様のことは気に召さない様子。
posted by みずほ at 13:42| 大阪 ☀| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月23日

チャイルド44

『このミス』を参考にミステリーを選ぶ人は多いのだろうか?
先日本屋の平積みにあった、『このミス』から選んだ一冊

洋物ランキングのNo1だった為、
『じゃあ、結構皆読んでるだろうから、後から読もう』
と、思ったのだが、
これまた、『このミス』の近くに置いてあったので、
ついつい拾い読みしてしまううち、買ってしまった。
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『チャイルド44』は結構怖い。

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

  • 作者: トム・ロブ スミス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/08/28
  • メディア: 文庫


  
チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

  • 作者: トム・ロブ スミス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/08/28
  • メディア: 文庫





評価は二分するが、私は結構面白かった。
批判にはかなり辛辣なものも有り、ミステリとしての面白さである、
謎解きや、スリリングな描写的なものが薄いとか、
ネタバレ感があるとか、色々あるが、
主人公夫婦の唐突な正義感、それに伴う犯人逮捕への情熱など、
心理面の描写が希薄でダメ出し評価をしている方も多いのでは。

私自身では、人の心理の唐突な変化は凄く自然に理解できるので、
あまり、違和感はなかった。
むしろ、人の心理は唐突に変化すると思っている。
行動も、それに対するビジョンの現われにしても、
心理の変化に『これこれこういう理由で、こうなって、こうだから』
などと言うような、考え抜いた理由のようなものはないと思うし、
むしろ、理由があるほうがなんか心を偽って・・・といおうか、
そっちの方が信憑性が無い。

私が思うに、主人公は、旧ソ連の社会体制の中で
たとえこれが当たり前だ、と、思う生き方、考え方をしていても、
意識してないとこでは『何かが違う』というような、
本質的な良心や正義感があったのだと思う。
無意識のなかで膨れていった、本質的感情なんかが
爆発した時、人の考え方は唐突に、たいてい180度変わるものだ。
同じ社会で生きる、家族や周りの人たちにも、
同じような変化があっても不思議じゃないし、
それについてのプロットは無い方が、色々想像できるからいい。


人が人や自分を思うことには、理由はないし、
それだからこそ、わいてでる正義感や愛情なんかだと思う。
そもそも、それが当たり前の人間だし、
たとえ、国が体制が、教育し、洗脳していても、
人が人の心までも創ることは、社会主義であろうが全体主義でも
結局は出来ないんじゃなかろうか。と、
ことを、作者は伝えたかったのではないのか?
そうだったらいいなぁ、と、思う。

この作品は実際に旧ソ連体制時代に起きた、
チカチーロ事件をモデルに書かれたと言われている。
チカチーロは50名余(余罪が多く、正確な人数は分からないらしい)
の子供を、何年にも渡り殺害し続けた連続殺人犯だが、
世界でも屈指の大量殺人事件として、色々な本にも出ている。
チカチーロ事件を綴った『子供達は森に消えた』

子供たちは森に消えた (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

子供たちは森に消えた (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: ロバート カレン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1997/10
  • メディア: 文庫




が、小説の素地になっていると言われているが、
私もだいぶん前に読んでいる。
これは、ノンフィクションだけにかなり怖い。

人は守る事も、壊すこともどちらでも出来るから、
心が勝っていれば、愛したり、守ったりしながら人として生きれるし、
負けたら、壊したり、殺したりして、人で無くなるのだと思う。
そういう意味では、本書に出てくる人たちは全て、主人公も含め、
後者になりうる可能性だってあったかもしれない世界であり、時代であった。

心の勝利ゆえに結末の大団円で小説は幕を閉じたが、
殺人者のような怪物にならない、作らない世界を実現させるというテーマは永遠に続く。

ちなみに、作者トム・ロブ・スミスはイギリス人の若干30歳
ケンブリッジ卒の、インテリだそうだが、
確かにイギリス人の描くロシア舞台の小説という面では、
批判意見にもあるように『あー、うー』という様なニュアンスもあるが、
旧ソ連末期に生まれ、ソ連崩壊期には未だ12歳位だから
(ソ連崩壊って1990か1年だったっけ?忘れた!)
実際その当時生きてたロシアの人のようにはいかないけど
きっと凄くその当時の国家体制や社会主義に疑問や思いを持ってたんだろうなぁ

映画化が決定しているらしいけど、難しそう。
でも、楽しみ。



ラベル:ロシア 旧ソ連
posted by みずほ at 16:26| 大阪 ☀| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月12日

スカーぺッタ

昨今はもう、深刻な犯罪増加の道をどんどんたどっているので
犯罪小説や、ミステリー小説も、もはや
非現実のフィクションともいえなくなってきているのかもしれない

最近では指名手配犯、市橋容疑者逮捕や、著名人による薬物問題など、
一昔では、『嘘みたい』と、思うようなことも
普通になってきているようだし

市橋事件では、いとも簡単に整形できたり、
結構逃げ続けれるもんだなぁ・・・などと思ってしまった。
日本の警察や捜査のレベルは高いほうだと思っていただけに、
『警察のレベルが低いのか?』
いや、犯罪者の方がよりしたたかになったのか?
それとも、犯罪者が生きていきやすい世の中になりつつあるのか?

いやはや、恐ろしい〜

てな訳で、世の中の暗い部分を出来るだけ見ず、
心身ともに健康第一でいるためにも、
新聞は取っていない。
1週間〜10日後くらいに、市場の包装用にある、
古新聞を読んで、『へぇーこんな事があったのかー』と、
落ち着いて知ることが出来る。

その場でリアルタイムに情報を知ってしまうと、
きっと情報のパワーだけで、冷静さを失ったり、
情報に煽られてしまいそうで、怖いからだ。
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陰惨な事件や犯罪の最新情報を
無視して暮らせない人がいる。
犯罪捜査をする人たちだ。


スカーペッタ〈下〉 (講談社文庫)

スカーペッタ〈下〉 (講談社文庫)

  • 作者: パトリシア コーンウェル
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/12/15
  • メディア: 文庫


   
スカーペッタ〈上〉 (講談社文庫)

スカーペッタ〈上〉 (講談社文庫)

  • 作者: パトリシア コーンウェル
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/12/15
  • メディア: 文庫






検死シリーズのヒロインスカーぺッタは
その中でもとりわけ最先端に犯罪の情報を
見つけ出さねばならない検死のプロフェッショナルとして登場する
ベストセラー小説の主役だ。

シリーズ1巻からファンになっているから
新作はいつも楽しみで、今回シリーズ10弾目にあたり
特に期待に胸躍らせて一気に読んだ。

特に前回の続きから、同胞マリーノ刑事の失踪がどうなったのか?
二人の溝は埋められるのか?など下世話な興味もあった。
小説の中でどんどん時が過ぎ、いろいろなものが変わっていくのも面白いし、犯罪捜査の細かいプロットも『へぇー』となる。

但し、いつも最後の何ページで犯人が登場するところ
(いしいひさいちの4こま漫画でも指摘)
は、いかんともしがたいが、これが作風?なのか
しかし、今回は序盤で犯人はだれかわかる。

普通の人のような登場をしていても、必ず病的に嫌な奴、
おかしいんじゃないか?っていうふうに書かれてるから、
よけい分かりやすい。
犯人を推理すると言う小説ではないから、(多分そうなんでしょう?)
作者も悪い奴を容赦なく悪い奴として書いてる。
実在の人物名を挙げて、法の限界を皮肉っているようなところも
「あー相変わらずシニカルなひとだなぁ」と思う。

DNAなどの最新技術の穴を指摘している事も興味ぶかい

いずれにしても、今回も面白かった

ちなみにスカーペッタはグルメ(食いしん坊?)だから
小説には常に登場する料理のメニューや素材など、
細かい記述があるのだが、今回はあまりなかった。
「おいしい食事は睡眠不足も帳消しにする」という格言には共感だ。
スカーペッタの食事事情や小説に登場した料理のレシピはこちら


パトリシア・コーンウェルの食卓

パトリシア・コーンウェルの食卓

  • 作者: パトリシア コーンウェル
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/02/26
  • メディア: 単行本



ラベル:犯罪 料理
posted by みずほ at 14:56| 大阪 ☔| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月17日

信長の棺

最近は忙しいから、ゆっくり読書とはいかないが、
空堀【練】内の販売店「flowertic*練」への通勤は
もっぱら電車なので、移動の合間に読書する事にした。

電車通勤なるものは、あまり経験が無いので、
通勤時間の電車の移動は結構苦痛だ。
移動中の時間も、もったいないような気がする。
仕事に行くまでに、疲れそうだ。
遠くから毎日通勤している人は、さぞ大変だろうなぁ。

移動中の時間を読書に利用している人も多いので、
私もあやかって最近は移動中=読書タイムにしている。
が、途中で中断しないといけないのが、ちょっと嫌。

読み出したら止まらないタイプだから・・・
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そんなわけで移動中の駅前書店で、『ぱっ』と目の前にあった本を読んだ。

【信長の棺】

信長の棺〈上〉 (文春文庫)

信長の棺〈上〉 (文春文庫)

  • 作者: 加藤 廣
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/09/03
  • メディア: 文庫





信長の棺〈下〉 (文春文庫)

信長の棺〈下〉 (文春文庫)

  • 作者: 加藤 廣
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/09/03
  • メディア: 文庫






は、なんだ!11月に朝日放送でドラマになってたんだな!
我が家にはTVが無いので、ぜんぜん知らんかった!


『信長公記』著者の太田牛一を主役とし、
忽然と消えた信長の遺骸を捜すことから信長暗殺の謎解きが始まる。
あらすじは、ドラマを見ている人も多いから、いまさらは不要だろう。

太田牛一は、戦国時代、派手な武勲を立てた武者とか、
切れる執政者とか、そういった人物ではないが、
教養があって文武に優れていた人物ではあったらしい。
この時代どちらかと言えば地味な人物を主役にそなえて
書かれた物語は中々に興味深いし、
著者の「加藤 廣」氏の時間をかけた史料の研究や、
綿密に練られた構想などで、
物語は単なる虚空のフィクションというよりも
『信長暗殺』における一つの仮説みたいにまで感じる話だった。
から、結構面白かったので、
『あードラマになるのもわかるわぁ』と、思ってしまった。

家庭の事情からドラマの内容は分からないが、
後に、サイトで調べたら、太田牛一には松本幸四郎さんがキャスティングされていたのを見て、
『あーなるほど』というのと『うーん?なんちゅうか?』
という気持ちになってしまった。

話は変わるがこの時代の3大武将を例に挙げて
正確判断のタイプにされることが多い。
私はたいていの正確判断で、「家康タイプ」とレッテルを貼られるし、
自分でも何となく納得してしまうが、憧れるのは「信長タイプ」だ
ちなみに「アンチ秀吉」なので、
秀吉を良く思わない牛一につい、共感してしまった
ラベル:織田信長
posted by みずほ at 13:35| 大阪 ☀| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月24日

北の愛人

新しい本を買うヒマも、図書館に行く暇もない。

本を選ぶ時は、たいてい、あれこれと拾い読みして
『ビビッ』ときたのを、最終的に選ぶから、
本屋で本選びをするのは、結構時間がかかるし、
図書館なんかは、1日中居れるから、
自分の時間にゆとりがあるときでないと損だ。

家にあるのはもう何べんも読んでしまったし。。。

たまたま、用事で実家に寄ったので、
父の書棚から、適当に1冊抜いてきてやった。

難しい辞書や専門書の類がしまってある書棚は無視し、
娯楽用の小説なんかが、乱雑にしまわれている書棚から、物色する。

父は、純文学派なので、坂口安吾や阿部公房なんかを色々持ってるが、
私は、ちょっと苦手だな・・・
高度な読書家じゃないから、何書いてるのか分からん。
(砂の女なんか、ぞぉーっとしてもうた!)

てな訳で『おっ!これは知ってるぞ』というのを
パチってきた。
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北の愛人 (河出文庫)

北の愛人 (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1996/10
  • メディア: 文庫




この作品は1992年の映画『愛人』の姉妹編と言われている。
映画のほうは、ビデオで見た。

愛人(ラマン) 無修正版 [DVD]

愛人(ラマン) 無修正版 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東北新社
  • メディア: DVD




主演のレオン・カーフェイの男っぷりにときめいたものだ。
映画は、原作者の意図する出来ではなかったらしいが、
ヒットしたし、事実いい感じの映画だと思う。

原作の方は、1881年に発表されたらしいが、
姉妹版といわれる『北の愛人』は10年ぐらい後に発表されている。
原作よりも、もっと家族のこととか、詳しく書かれていて、
少女=愛人の間柄のことのほか、少女=母 少女=兄弟 少女=友人
等等、ディティールがより詳細になってる感じ。

私はどちらかと言うと、けだるくて、物憂い雰囲気のする
こっちの方が好きだな。

『愛人』を含めた本作品はマルグリット・デュラスの自伝的作品ともいわれているが、
残念ながら、彼女に関する予備知識が全く無いので、
又、調べてみる事にするとして、
こういう本は『娯楽小説』ではなく『文学』だから
何度も読まないと、分からん

と、いうことは、これは必然的に『借りパチ(借りたままかえさないこと)』することに決定!
小言をいわれたら、返す事にしよう。

ラベル:
posted by みずほ at 09:02| 大阪 ☁| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月31日

怪盗ジバコ

稀代の怪盗【ルパン三世】のアニメは子供の頃の憧れだった。
犯罪者がヒーローを演じるという、風紀上いただけないテーマだったにも関わらず、
老若男女に、人気のアニメだろう。

泥棒はいけない事だが、それが、ヒーローとして、許され、
あまつさえ賞賛される所以は、ルパンにしろ、鼠小僧にしろ、
空想泥棒ヒーローが、義賊だからに限られている。

何も、貧しい人に盗んだ物を施すことばかりが、
義賊のカテゴリに入るようではないらしい。

盗む相手が人論を超えた、悪人の金庫から頂戴するのだから、
庶民にとっては『ざまぁみろ』と、言いたい気分だし、
大物悪党を相手にすることは、それと癒着している国家権力のみならず、
残酷な悪党の恨みを買うというリスクも背負い込みながら、
泥棒家業を続ける事は、かなり、根性が座っていないとできる事ではない。

義賊の泥棒ストーリーが痛快で、人気があるのは、
【自分達より力あるものを相手に、挑む!】と、言うロマンだと思う。

加えて、泥棒キャラのスタイルはどれもカッコいい!
映画『オーシャンズ・11』シリーズ等は、実写のキャラだけに
ジョージ・クルーニーや、ブラット・ピットらの演じるカッコよさに
シビレまくった方も少なくないのでは・・・?

ルパンは当時のハイソサエティーだった。
今から思えば、ゴーゴーダンスに、サイケデリックファッション、
やたらにでかいオープンカー、太いもみ上げ、太いネクタイ。
今の流行から見ると、ダサダサのはずだが、
今見ても、やはりカッコいい。古い言葉で言うと『イカす』のだ。

6速ミッションの車、トレードマークのファッション(いつも同じ服)
ワイン、よれよれのタバコ、
ボディコンシャスなレザーのジャンプスーツと、ハーレーのバイク、
ハンフリー・ボガードへの愛着、サイケで、ハードなブルースロック。
何もかもに、憧れた。

ルパンアニメは初期の頃ほどいいが、後年、巨匠、宮崎駿による
『カリオストロの城』は、これまでのルパンや、
その他のキャラクターのイメージを180度変える作品となった。
登場するキャラ全てが、【義賊らしい義賊】になる。
男気はあるがドジな銭型警部や単なるエキストラにすぎなかった、
警察官の面々までが、道徳心の強い正義観として、登場させている。
警視庁への配慮であろうか?
色気にすっかり欠けていることと、ウィットにとんだシニカルなジョークがないかわり、
コミカルな動作や、顔で、笑いを誘う所は、
従来のルパンの魅力本来ではなく、ちょっと残念だった。
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お気に入りの、義賊ヒーローの小説と言えば、
【怪盗ジバコ】をおいて他にない。


怪盗ジバコ (文春文庫)

怪盗ジバコ (文春文庫)

  • 作者: 北 杜夫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/04/10
  • メディア: 文庫





怪盗ジバコの復活

怪盗ジバコの復活

  • 作者: 北 杜夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/12
  • メディア: 単行本





【ジバコ】は未知の存在だ。
年齢、国籍はおろか、性別すらも分からない。
もちろんストーリーが進むに連れて、
ジバコの正体がわずかながら見えるが、
やはり、最後までつかめない存在だ。

つかめない存在=つかめられない存在として、
ジバコは各国の警察を次々と煙に巻いてゆく。
が、ルパンのような、カッコよさは全然無くて、
そのキャラクターを、形容するならば、
童話に出てくる仙人のような、化け狸のような、子鬼のような、
コミカルな神様のような・・・
要するに、ファンタジーな可愛い存在なのだ。
それゆえに、【怪盗ジバコ】は大人の童話みたいな小説だ。

稀代の大泥棒ルパンや、007、刑事コロンボなどとの対決ストーリーもあって面白い。
作者、北 杜夫氏自らが登場するストーリーもある。

さて、この【ジバコ】、ストーリーも面白いが、
佐藤愛子 女史による、解説まで、楽しかった。
本の内容を想定する為に利用している解説欄だが、
この本の解説に関しては、本の内容等には一切触れておらず、
佐藤女史と、作者、北杜夫氏の関わりを通して、
北杜夫氏、論を簡単に述べているだけに過ぎないのだが、
それこそウィットに飛んでおり、
北杜夫氏のミラクル&ファンタジーな人物像が、良く伝わり、
それゆえに、【ジバコ】なる小説に、期待とワクワク感を持ってしまったのだ。

佐藤愛子女史は、北杜夫、川上宗薫らと共に
『文藝首都』や『半世紀』などの同人誌を発行していた昔馴染みで、
『戦いすんで、日が暮れて』などの名作と共に、
辛辣な戦後世相の批判でも知られる女傑であるが、
何となく、フワーっとして、穏やかそうな、北杜夫氏と懇意だと聴くと、
ミスマッチと、思う反面、なんか納得という気がしてしまう。
ラベル:ルパン三世
posted by みずほ at 10:25| 大阪 ☀| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月26日

ミス・メルヴィルの後悔

昨今は『アラフォー』などと、熟年女の価値が見直されているようで、
ファッション、トレンド〜風俗に至るまで、熟女の活躍する場がままあるが、
私に言わせれば、「なんでやねん?」の現状だ。

私自身、アラフォーだが、その実態は【おっさんおばはん】だ。
実際どうよ?TVや雑誌に出てくるような、麗しき中年女が、まわりにいるだろうか。

確かに、歳を重ねれば、精神的にも人間練れて来るが、
私ら、ミセスは今一番忙しく、己の事にかまってられるか!
と、言うようなバイタリティーでもって日々を過ごさねばならないので、
正直、色恋だのの、艶っぽい機能は死んだも同様だ。

ハイミスのアラフォーなんかは、まぁ素敵な雰囲気を醸しているかもしれないが、
女、一人、人生やってると、ある程度の嗜好や人生観も固まってて、
なかなか、気難しくて、厄介なところもある。(我、友人達を見ていると・・・)

まぁ、人の好みそれぞれだから、それも良いことだろう。
でも、私が男なら、やっぱり、20代までがいいなぁ。
恋を楽しむなら、見るだけで楽しい・・・それでいきたいものです。
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ハイミスを主人公にした、人気小説も色々あって、
人気のあるのはやはり、女検死医、ケイ・スカーぺッタシリーズや、女探偵VI・ウォーショースキーシリーズあたりだろうと思う。
小説を描く、パトリシア・コーンウェル、サラ・バレツキーも、知性あふれる、麗しき熟女だ。
前者のヒロイン達も、魅力的女性には違いないが、
どうにも頑固で、傷つきやすく、どこかしら優柔不断で、気難しい女性でもあるが、
小説のハイミス、ヒロインで、気難しいNo1と言えば、
イヴリン・E・スミスの描く小説、ミスメルヴィルシリーズの、
スーザン・メルヴィルをおいて他にいないのではないか?
シリーズの第1弾【ミス・メルヴィルの後悔】である。


ミス・メルヴィルの後悔 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミス・メルヴィルの後悔 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: イーヴリン・E. スミス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 文庫




小説のヒロインやヒーローは苦境に立ち向かって、
身を立てた立志伝中の人が多いのに対し、
このヒロインは元、社交界の令嬢だ。
但し、没落名家の姫君である。
父の出奔後、落ちぶれて、市井のオールドミスという立場から、
物語はスタートするのだが、
育ちと言うものは、恐ろしい!!
何しろ、こんな鼻持ちなら無いヒロインはそうはいない!
しかも!極めて頑固で、気難しい。
何しろ、出だしは自分を追い出そうとする、アパートの大家を殺してしまうのだから。
しかも!わざわざ、新聞広告や友人達に、自分の死の旨を伝える準備まで万端で、
『あいつを殺して、自殺する!』と、言うような大層なことをきっかけに、
フリーのアサシンとして、スカウトされる、というストーリー。

はっきり言って、そんなんで人殺ししてたら、なんぼやっても追っつかんがな!
てな、動機で、最終、同じような動機で誰かを打つのだが、
それをきっかけに、自分の本来の夢を実現、成功に導くと、
まぁ、都合がいいというか、何というか・・・
私は「Take Joy」型気質だが、
スーザンメルヴィルは「Shot The Chance!」か?
気が荒いぞ!

衝動で、何かをする人というのは、結構いるが、
スーザン・メルヴィルはまさに、その通りの人物だ。
しかも、女性で、考え方の硬くなっている、ハイ・ミスだから、尚怖い。
ベットのリネンだの、アイスクリームの種類だの、なんだのにいちいちこだわるクセ、物事の考え方は偏狭的。
で、更に、いちいち断定的に論するところも鼻持ちなら無い。
人との関わりあいの中でも、表面にみせている自分と、
胸の内で思っている事は、開きがあり、しかも思っている事が辛辣。

知恵と、経験に長けると、こうなるのも理解できるが、女性に対する夢は無くなるよねー。

どうですか?知的で美しい、熟女がにこやかに話しかけているけど、
心の中では『全く、この人ってば・・・』と、眉をひそめているとすれば・・・あー怖い。

しかし、この鼻持ちならない、元お嬢様の物語を、どこか、憎めずキュートにしているのは、翻訳の長野きよみさんの手腕ではないか?
何ちゅう奴っちゃ、と、思いつつ、シリーズ
【帰ってきたミス・メルヴィル】
【ミス・メルビルの復習】
【ミス・メルヴィルの決闘】

まで、読んでしまった。
ちなみに、以上4編はハヤカワミステリから出ているが、
扶桑ミステリからも1巻、翻訳が変わって
【ミス・メルヴィルの好運】があるらしい。こちらは、見つけられないし、読んだことが無い。


これは、余談だが、 我母親が60歳の時、機会があってフランス留学をしたことがあったが、こんなエピソードがある。
とても憎たらしく意地悪な教授に、やり込められ、
憤懣やるかたない母が、ささやかな仕返しをした話。
その意地悪教授は、学校の前の公園で、
毎朝、花壇だのがなんだのが見える、道のベンチで寛いでいたので、
前夜のうち、公園中のベンチを噴水の周りに集めて、
噴水しか見えないようにした!らしい・・・
いくら、小さい公園だったとしても、なんちゅうことを・・・
と、思わずにはいられない、馬鹿馬鹿しい仕返しを大真面目にやるところが、
熟女の怖いところではないか?

若い娘だったら、楽しい未来が次から次へとあって、
そんなこと考える暇も無いかもしれないが、
知恵もつき、頭脳も鍛えられた、
年配女性の記憶力や実行力や、想像力は、面白くもあり、恐ろしくもあるので、
『熟女は優しい』なんて幻想を持っている方はご用心を!
ラベル:アラフォー
posted by みずほ at 18:13| 大阪 ☁| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月21日

ハンニバル

人間、皆、自分に無いものを求める。
私に無いものは、お金、時間、体力、の3大欠如だが、
サブカテゴリとしては、品、知性、教養だと思っている。

これに関しては、私を実際に知っている人は納得する。

『品、知性、教養』は、努力で身に付くとは言え、
なかなか、その努力は出来ない。

面白い話をしようと思うと、つい下品になるし、
下品になってしまうのは、知性、教養がないから、
安直な話題しか出来ないんだと思う。

教養は、論外で、そもそも教養を身に付けれてたら、
もう少しましになってたやろに。。。
と、思うことが、週に一度はあるような気がします。。。。

まぁ、それも楽しい自分なのだがね。。。

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本当に、知性教養、品のある人物なんだかどうかは、分かりはしないが、
ハンニバル・レクター博士は、完璧だろう。


ハンニバル〈上〉 (新潮文庫)

ハンニバル〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: トマス ハリス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/04
  • メディア: 文庫





ハンニバル〈下〉 (新潮文庫)

ハンニバル〈下〉 (新潮文庫)

  • 作者: トマス ハリス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/04
  • メディア: 文庫




ハンニバル・レクター博士は、キングオブミステリ作家のトマス・ハリスが生み出した、稀代の悪漢キャラクターだ。
初めては、小説ではなく、映画【羊達の沈黙】によって知った。


羊たちの沈黙 (新潮文庫)

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

  • 作者: トマス ハリス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/09
  • メディア: 文庫




レクター博士、演じるアンソニー・ホプキンスは『マスク・オブ・ゾロ』『ジョーブラックをよろしく』などなど、多くの映画に出演する名優だ。
彼の演じるレクター博士はインパクトがあった。
映画を見てからトマス・ハリス作品を読むようになったが、
めったに、本を購入しない私が
『ブラックマンデー』〜『ハンニバルライジング』までを秘蔵本としている。


ブラックサンデー (新潮文庫)

ブラックサンデー (新潮文庫)

  • 作者: トマス ハリス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1979/03
  • メディア: 文庫





レッド・ドラゴン 決定版〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

レッド・ドラゴン 決定版〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: トマス ハリス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 文庫




レッド・ドラゴン 決定版〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

レッド・ドラゴン 決定版〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: トマス ハリス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 文庫







【羊達の沈黙】からハンニバルレクターファンが多く表れたと思う。
かくいう私もその一人だ。

映画【ハンニバル】は上映当時、大いに話題になって、
ハンニバル論や、ハンニバル、ガイドのような本も幾多か出ている。
実際の小説と、映画ではストーリーがずいぶん違う。
ラストシーンに関しては180度違う。
これは、意図してこうなったのだろうが、
私としては、レクター博士と、クラリスのラストをオリジナルでやってほしかった!派だ。

ハンニバル・レクターファンが多いのは、
先ず、彼の知性と教養の魅力。
それから、欲望の権化だとか、社会病室者だとかの枠を超越した悪人ぶりだと思う。
読んだ人には分かってもらえるかもしれないが、
レクター博士は、犯罪者ではあるが、極悪非道の悪魔でない。
なんか、矛盾しているのだが、読みまくらなければ分からない。

この本を読むなら途中で中断しないで、一気に読むことをおすすめする。
ストーリーの複雑さから、中断すると、記憶が散漫になってしまうし、
捜査、心理学上の専門用語が結構出てくるから
『へッ?』となることも多い
ざーっと拾い読みすると、会話の端等に、ストーリー重要な事が出てたりして、『えっ?何のこと?そんなんいつ言うた?』
見たいな事が生じるので(私だけか・・・?)
集中して一気に読む。と、臨場感もひとしおだ!

回を重ねるにつれ、レクター博士は特にキャラクターの厚みを増してくる。【レッドドラゴン】ではクローフォドと共にFBIの視点が強く、
彼のキャラクターの方が立っていたが、段々と先細り、【ハンニバル】では、強固な氷柱が溶け去るように、クローフォドの存在そのものも消え去ってしまった。
変わりに【羊達の沈黙】から登場するスターリングが、その存在を確立する。
彼女はFBIという法執行機関の側にいるが、レクター博士と共にする焦点も持ち合わせている。
それは、博士が分析する『行動の権化』が上手く表してるような気がする。
法や世の中の正義という曖昧なものより、彼女自身の正義を行動で実行する。場合によっては法という壁をも躊躇無く打ち抜く。
その気質は【羊達の沈黙】にすでに表れていて、
【ハンニバル】でレクター博士との共通する焦点に行き着くのか、
もしくは、交差するのか・・・が見所だった。
ラストには非常に満足している。

残念ながら映画では、小説のようなラストは無い。
確かに、このまま表現するのは、犯罪を肯定、賛美しかねないし、
ありのまま、広く公開するには危険だ。
映画では、ストーリーの重要な存在であった人物も割愛されていることは、残念だった。(但し、ディフォルメされてるストーリーには彼らの出る幕は確かに無いが・・・)


ただ、怪物は怪物のまま生まれてくるのではない。
社会が、世の中が怪物を作る。
と、言うことも、上手く伝わっていると思う。
レクター博士の過去を知るとそれがよく分かる。
もっと詳しく具体的に【怪物レクター】が生まれるまでを綴った
【ハンニバルライジング】で理解できることと思う。
しかし、怪物は怪物でも色々あるのだろう。
自分という怪物を作り出した世の中のどこかの怪物に、自分の欲望や欺瞞やあらゆる弱さが負け、食われてしまったその時、人間は心を失ってしまう。
登場した、社会病質者的犯罪者のように、又、普通の人と変わらない人間の中にも共通するものがいる。
自分の意志で怪物になったレクター博士とは違うような気がする。
レクター博士にはれっきとした心があるし、(常人の理解を超える部分もあるが、きわめて納得の部分もある。曖昧さがないのだ!)
行動も心も自分の意志によるもののように思う。
感動したのは、レクター博士といえど、『愛する』ということを辞めることが出来ないというところだった。


ハンニバル・ライジング 上巻

ハンニバル・ライジング 上巻

  • 作者: トマス ハリス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫




ハンニバル・ライジング 下巻

ハンニバル・ライジング 下巻

  • 作者: トマス ハリス
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫




余談だが、あらゆる知識を誇るレクター博士は、
フラワーデザインにも造詣が深く、クライマックスの晩餐のシーンで、こだわりのフラワー装飾をしている。
彼の作るアレンジは、中世の古典的な技法と花合わせのクラシカルなアレンジメントだ。

posted by みずほ at 17:32| 大阪 ☔| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月20日

浪花少年探偵団

『この川を越えると、帰って来た〜』って気がするところや、
『この、道から先はなんとなくおちつかない』気のする境界線みたいなもの、
誰にでもありそうだし、どこの土地でもありそうな感覚。

私の住む大阪も何とわなしに、地域の境界線があって、
その区分けごとに、どこかしら雰囲気が違う。

【大阪は川の町】という文化遺伝子がしみついているのか?
私の境界線は川か筋だな。
筋は道だから川じゃないじゃない?
と、いわれるかもしれないが、大阪の多くの筋は
元は運河だったりしたものが埋められたものも多いし、
川は治水工事によって作り変えられたものが結構あるのだ。

日本で3本の指に入る【きちゃない川】として有名な
【大和川】も元はずっとくねくねした複雑な川だったが、
度重なる水害と運河に利用の為、今の形に作りかえられた。
今は東西を直線的に流れているが、
昔は北東から南西に直角を描くような形だった。
ちょうど今の東大阪、八尾あたりの河内方面から
柏原ぐらいのところで堺西方面に流れ出ていたものと思われる。

昔の地図を見ると、大阪府北方面を摂津、東を河内
中心を難波、堺、南を和泉と大きく分けるとこんな分類になるが、
今もその伝統はあまり変わってないように思う。

それが証拠かどうかは別として、
堺の私には和泉は仲間意識、北は中央区の中央大通りを越えると、
所在無い気持ちになってしまい、せいぜい北は神崎川くらいまで、
京阪電車に馴染みなし。
逆に北方面、池田市の友人は、千日筋、大和川、近鉄電車に馴染みなしと、いう。
大阪府中央区の友達は、我々の意見を『何?それー?』と、理解せず。
さすが、中央部の人はマルチカリチュラリズム(そんな大層な!)なのだなぁ。
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浪花少年探偵団 (講談社文庫)

浪花少年探偵団 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/11
  • メディア: 文庫





しのぶセンセにサヨナラ―浪花少年探偵団・独立編 (講談社文庫)

しのぶセンセにサヨナラ―浪花少年探偵団・独立編 (講談社文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/12
  • メディア: 文庫




東野圭吾といえば『探偵ガリレオ』『容疑者X』等、
話題の作家だから、ファンの方はとても多いことと思う。

1985年江戸川乱歩賞受賞で本格的デビュー。
書籍の数は多い作家だが、デビュー意向、常に候補には挙がるものの、
賞には恵まれなかったが、2006年念願の直木賞、ミステリ大賞のダブル受賞で話題になっていた。
『探偵ガリレオ』のドラマ化、映画化は、俳優、福山雅治氏主演の
キャスティングも含め、ちょっとしたブームになったが、
私はあまり好みではない。
氏の描く、本格ミステリやサスペンスにはどこか凄みが無いような感じがある。
何となく、全てにおいて作者の【暖かさ】的なものが出てるような感じが、【犯罪の恐ろしさ】をいつも和らげているような気がしてしまう。

むしろ、『鼻をほじりながら読んでるうちに、なにか暖かくジンとくる』ような、この【浪花少年探偵団】の方が好きだ。
作者の【暖かさ】を感じつつも、犯罪や悪意に対する正義を感じられる。

トリックも、動機も、ストーリーも、何てこと無い日常で、
登場人物も、どこにでもいるような市井の人々だ。
『スーパー探偵』のようなヒーローも、『悪魔の化身』如き悪人もいない。
いるのは、ある意味美人ではあるが、がさつなヒロイン、
『大阪の元気で明るい小学校女教諭』、『大阪のごんたくれガキンちょ』
『大阪のあんちゃん刑事』『大阪のおっさん刑事』『大阪のおかん、おとん』『大阪のおっさん、おばはん』
などの普通の人たちの、普通の正義や愛情、優しさと、
普通の人の普通の心の弱さから生じる、悪意、犯罪が事件として展開する。
ミステリとして読めば、何とも気の抜けるようなものだが、その普通さが、私にとっては心にしみるのだ。
上記の感想は、続編【しのぶセンセにさよなら】の最終章に集約されている。

ちなみに大阪は『先生』=『センセ』という。
作者は大阪府出身なので、大阪を余すところ無く表現しているから、
会話もすべて『べたべたの大阪弁』で、舞台も東住吉区だの、西成区、だのの、大阪でも特にべたべたの下町、生活地域に、たこ焼きがどうだの(ヒロインの好物がたこ焼きらしい)食べ物がどうだの、犬の糞がどうだのとくだらないことが満載だ。
おしゃれな関東方面の方々にはいささかうざいかもしれないが、
簡易に大阪人体験できる小説だと思う。


ラベル:たこ焼き 大阪
posted by みずほ at 14:30| 大阪 ☔| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月11日

少年キム

夏休みが近づいてきている。
夏休みといえば『宿題』=『読書感想文』ではないか?
子供の頃は、確かに苦痛だった読書、及びその感想文製作も、歳をとったら楽しみになるのが不思議だ。

だいたい子供の頃は誰でも、思い切り身体を動かして遊ぶほうがいい。
特に、夏休みは水遊び、冒険などなど・・・
文章の世界で遊ぶより現実世界で楽しいことが沢山あるのだから。

だから、夏に読むのは冒険とロマンの名作がいい。
子供が冒険をへて育っていく。
それが、冒険小説の基本的テーマになるものが多い。
小学生くらい向きの子供冒険ものとしては、
仲良し3人組が、毎度珍事件に挑む『それいけ!ズッコケ3人組』シリーズ等懐かしくはないだろうか?

この夏おすすめしたいのがある。
私の秘蔵本でもあり、何年も単行本を大事に持っているが、
毎年、夏になると、必ず読むことにしているので、
すっかり古びてしまったが・・・

【一家に一冊】の名作をご紹介したい。
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イギリス人初で、史上最年少【ノーベル文学賞】作家
ラドヤード・キプリングは
英国が誇る偉大な作家だ。
1894年に書かれた【ジャングルブック】は、
ディズニーアニメにもなっているのでで馴染みの方も多いことと思う。

名作中の名作と思っているのが、大好きな
【少年キム】である。


少年キム

少年キム

  • 作者: ラドヤード・キプリング
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 1997/05
  • メディア: 単行本





19世紀後半、大英帝国統治時代のインドを舞台に繰り広げられる
スリル&サスペンス&アドベンチャー&色々

インドで育った孤児の白人少年【キム】の物語だ。
大英帝国にとってのインドは、政治経済・軍事的にも重要な位置をしめていた。
南下策を採っていた対ロシアとの闇戦争のさなか、ロシア側の重要な位置であったアフガンや、
反英的国家に対しても政治的・軍事的な牽制の必要に迫られていたが、
各国の情報を探る諜報員の人材不足にも悩んでいた。
孤児のキムはあるときひょんな事から知り合ったラマ僧と心を通わし、
ラマ僧の『矢の聖河』を探す旅にくっついてゆくことになった。
ラマ僧に触発され、自分も亡父の残した予言『緑野の赤牛』を探そうと志す。

旅の紆余曲折の中で多くの人と出会う。
インド育ちの白人で、孤児、頭がよく、身が軽いいう
スパイの資質を備えたキムはスカウトされ、スパイ教育を施され、
スパイとしての活躍もする、諜報合戦のシーンも多く登場し、
スリルとアドベンチャーの楽しい物語だ。



本書の評は、作者の死後低くなったが、
これは後の太平洋戦争や、植民地解放への動きなど、
政治的視点から、作者が帝国主義と見られたことに関係しているのではないか?
もっとも、英国側視点から書かれているし、
作者自身の愛国心や民族的プライドもあってしかるべきかも知れないが、
これは一種のいいがかりではないか?と、いう気もする。

だいたい、帝国主義の賛美がテーマなら、本書はこんなに魅力的にはならんのと、ちゃうか?

当時のインドの風景や、階級人種、とりどりの登場人物人物が、
区別無く皆人間味あふれる人物に描写されて、
とても豊かな物語に感じた。
私には『みんなの友達』と呼ばれる【一人の孤児】を、
それぞれの思惑があるとしても、みんなでよってたかって育てた。
子供はみんなの子供、みたいに感じたが・・・

それに関しては、解説の中でも言及されているので
そちらにも是非目を通してもらいたい。

少年キムは作者の夢想した子供の自分像みたいにも思える。
子供の頃あこがれたスパイ、沢山の人との出会い、冒険、etc
夢をそのままに物語りにした。そのほうが楽しく読める。

実際のところ作者の意図するところはわからない。
それを研究する学問もあるが、やはり、本は楽しく読みたい。
まして、文学や芸術が政治・軍事的利用されたりすることは、
やっぱりおもしろくない。

『ペンは武器よりも強い』という格言がある。
物によっては人の心に触れ、動かせるからだろう。
自分の純粋な愛国心や、生まれ育った地への愛着を、
政治的な国威発揚に使われたり、反対に批判されたりされたら、
きっと嫌だろうなぁ。

話が暗くなってしまった。
ともかく、ただひたすら楽しんでみてほしい1冊だ。

【少年キム】はわりに長編で読むのしんどいという方
とにもかくにもキプリングの世界を楽しんで見てはいかがが?
昔をおもいおこして【ジャングルブック】を読み直すのも一興。
短編集も読みやすくて良いかも。


ジャングル・ブック (講談社青い鳥文庫)

ジャングル・ブック (講談社青い鳥文庫)

  • 作者: ジョセフ・ラドヤード・キップリング
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2001/11/15
  • メディア: 新書





キプリング短篇集 (岩波文庫)

キプリング短篇集 (岩波文庫)

  • 作者: キプリング
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1995/11
  • メディア: 文庫





ラベル:英国 インド
posted by みずほ at 11:17| 大阪 ☁| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月09日

後宮小説

だいぶん前になるが、1989年にファンタジーノベル大賞というものが生まれた。
新潮社、日本テレビの協力によるもので、ファンタジー小説という分野の新しい賞だ。
故 手塚治虫氏が選考委員として話題になったのだが、
受賞者選考中になくなられたので、企画そのものが波乱含みと懸念された。
だが、記念すべき第1回の受賞者作品は、レベルの高さを評され、
ファンタジーノベル賞は華々しくスタートしたわけだ。
記事を見て、購入した小説。それがこれだ。
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【後宮小説】とはまた淫靡なタイトルだが、
内容はファンタジー&アドベンチャーである。


後宮小説 (新潮文庫)

後宮小説 (新潮文庫)

  • 作者: 酒見 賢一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1993/04
  • メディア: 文庫





この小説は、受賞後、単行本販売され、
その後、TVアニメにもなったので、
知っている人も多いことだろう。
小説タイトルそのままでは、アニメとしてはいかんともしがたいと、
【雲のように風のように】(だったかな?・・・・)とか、なんとかいうタイトルに変えられていたが・・・・

面白いところは「中国宮廷史に基づいて話を進める」と、作者が記述しているところだが、
この小説に登場する王朝や人物は実在しない。
おそらく清、明時代にかけて起こった政権交代期を想定して架空の王朝を生み出したものと思う。

しかし、中国の風俗や地理などなど、博識な作者の知識で、事実のことも織り交ぜてあり、
架空世界が極めてリアルに感じられるのだ。
王朝の名や、引用した後宮史のこと、人物についての論文を引き合いにだす等等、
錯覚してしまいがちな、マジックの仕掛けのような文面が随所みられ、
中国史知識は、全く無いといって良いほどの私などは、
途中で実存する歴史を基にした、時代小説のような錯覚に陥ってしまったが、
まぎれもなく、これは【ファンタジー】空想小説なのである。

もっとも【史実に基づいてという】マジックにひっかからない
インテリジェンスな方や、空想小説という軸をふまえて読まれる方にとっては、
何てことないマジックだろう。

そもそも【素乾国】という文字に、架空を表していると、とある所で論じてあった。
『比較文学する研究会』というサイトをご参考頂くと、面白い。
http://hikaku.fc2web.com/pre/025.html

このサイトの中でも「空想は現実的」と分析されている。

難しいことはさておき、このファンタジー小説は、
好奇心旺盛な田舎少女が新皇帝の後宮設立にあたり、
応募し、入宮するとこらか始まる冒険だ。
若い新皇帝が収める素乾国は、不安定で
宮廷内は王権奪取の陰謀うずめき、外からはクーデターの動きもある。
波乱の中で、ヒロインはどう育ってゆくのか・・・?
と、いうのが大まかなあらましだ。

アニメでは小説の素地が弱くなってしまい、
なにより、キャラクターの人物像を空想する楽しみが無い分、
感激が減るので、ぜひ、小説で楽しんで頂きたい。

又、この小説のファンタジーとされる所以は、
ストーリーも含め、ストーリーテラーである、
作者がまるで中国史研究者の如き人物として登場している所ではないか?

作者自身も、空想人物となって書き上げたような小説だった。



posted by みずほ at 11:07| 大阪 ☁| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月05日

花月夜綺譚

どんなものを書く作家かどうか知りたいとき、短編作品集は便利だ。

待ち時間や、移動中でも切りよく中断できるし、気分で飛ばし読みできる。

選ぶときのコツは@知ってる作家が入ってる。 Aキーワードを決めるのが私の選び方だ。

夏になってきたので、今回のキーワードはやはり【怪談】にしよう。
エアコンまではまだ要らないが、暑さを感じるようになった今日この頃には、ちょうどいい涼だろう。
8月にもなると、そうは行かないが・・・・
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【花月夜綺譚】とは艶やかなタイトルだ。

10人の女性作家による短編怪談集だ。


怪談集 花月夜綺譚

怪談集 花月夜綺譚

  • 作者: 岩井 志麻子
  • 出版社/メーカー: ホーム社
  • 発売日: 2004/08
  • メディア: 単行本





『ギャーッ』というような怖さではなく、
女性ならではの見方で人の心の闇を描く、
じっとりとした怖さの怪談が揃っている。

本編のトップを切る岩井志麻子女史は
ホラー大賞受賞の経歴を持つ、ホラー小説の第一人者として、
人気も高い。
いつもは、エログロねたの、暗く陰湿なテーマが多いが、
文そのものは相対して綺麗な表現が好きだ。
今回も人の心の闇の恐怖だが、エログロは無く、
美しい風景と共にストーリーがあるが、
それゆえ寒々とした怖さがあるといえるかも。


個人的に一番気に入ったのは、霜島ケイ女史の【婆娑羅】だ。
出てくる登場人物皆が皆、奇怪で、中々にエグイのだが、
妙な清々しさがある。
むしろ登場しない人物や、舞台になっていない世界の方が恐ろしいとさえ感じる。

主人公の唱門師は言う
「人には人の、化け物には化け物の道理がある。
人も生きれば化け物も生きる。
争いはせめて欲得でやるもんだ。人だ化け物だで争ってはじまらない。」
何とも飄然とした言ではないか。

「飽きるまでこの世を彷徨うのも面白いかも」と、
出会った座頭の幽霊の言もまた潔よい。

自分の心の中は人にも化け物にも、死んでも分からないことなのかもしれない。
分かっていると思っている者ばかりが、恐ろしい物や世界を生み出す。
そちらの方が遥かに恐怖だ。

女史の作品を読んだことはまだないが、今度ぜひ読みたい。

posted by みずほ at 08:06| 大阪 ☀| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月01日

吉原手引草

元来、ケチなので図書館の愛用者だ。
本を購入するときはよほど気に入ったか、出先での暇つぶしや、札崩し(古いタイプなのでバスや電車に乗るときなどは事前に小銭を用意しておく)の際に買う。

後者の時のように、気まぐれに買うときに読む本を選ぶ時は
@表紙カバーの印象
A内容のあらまし
B偶々その時興味があったり、予備知識があったりしたのもの(ノンフィクションとか、ニュースや新聞などで話題になっていたものとか)

先ず読まないジャンルはエッセイなどの類なので、それははずすが、
旅行記だとか、料理本、地図だったりすることもある。

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【吉原手引草】はカバーの絵に引かれたのと、
少し前に図書館で【江戸の盛り場】という、
風俗資料本を少し読んでいた(東京散策に面白いかな?と思って)から。

あたりだった!



吉原手引草 (幻冬舎文庫)

吉原手引草 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 松井 今朝子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 文庫






江戸時代の大歓楽街、吉原は当時の国の承認風俗街だ。
性風俗文化のたいそうな歴史を担った街として長年君臨していた。
その吉原を舞台にストリーは展開するが、色っぽいものを期待しているのなら、大間違い。

吉原大まがき店(いわゆる高級店である)を支える看板花魁は歴史に名を残す大花魁も多い。
高尾、吉野、葛城など、大花魁の名はその当時のトップ花魁が代々襲名する名として、歴史にも登場する。

【吉原手引草】では今をときめく花魁『葛城』の突然の失踪を追ってストーリーが展開してゆく。
ストーリーは人物Aによる、葛城失踪の謎を探求するべく、吉原内の様々な人物から聞き込みをする形で始まる。
よって文章は終わりまで全て、各登場人物の語り言葉として書かれている。
人物の実態を具象化している文章は具体的にはないのだが、それぞれの話方や、違う人物による話などから、登場人物のパーソナリティが見えてくる。
そして、又、葛城花魁という一人の女性像が徐々に見えてくるなのだが・・・

葛城はどこへ消えたのか?
葛城はなぜ消えたのか?
葛城は誰なのか?

このミステリーに挑む登場人物Aのように読み進むうち気づくだろう。
『これは、ハードボイルだ!』

これ以上は言えない。だが、読めば分かる。
謎が解き明かされてゆく頃には、ハートが痺れているだろう。


posted by みずほ at 11:07| 大阪 ☁| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月28日

蘭陽きらら舞い

またまた【だましえ歌麿】シリーズから


蘭陽きらら舞

蘭陽きらら舞

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 単行本




シリーズ3弾の【春朗あわせ鏡】ではエキセントリックなキャラクターで春朗との名コンビだった、元役者、陰間の蘭陽が主役です。

こういうキャラは人気でそうと思った。
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今回の蘭陽は役者をあきらめきれず、カムバックに奔走するのだが、その中で、またまた事件に巻き込まれていく。(自分からつっこんでいってますね。この人たちは)
その中で、それぞれの人とのふれ合いや、蘭陽の過去に触れていくわけだが、今回、この蘭陽あまり歯切れがよくない。
春朗を相手にするときはスパスパと切り込んでゆく癖、自分のこととなるとじめじめ悶々ナ悩む。
まぁ、それが人らしいといえばそうだが・・・

蘭陽は謎が多い。廃墟の豪壮な料亭をねぐらにし、おしゃれで衣装もち、仕事もせずにぶらぶらしているようだが、お金に困っている風もない。
『あたし』言葉の女形スタイル、優男風だが、喧嘩も強く、度胸もある。
どうやら、前老中の田沼意次の密偵のようなことをやっていたらしい。なんとなく顔も広い。

『強くなくちゃ身を守れない』という台詞から、これまでの厳しい人生を想像させる。

そもそも、陰間=男娼というとへろへろ、気っしょーみたいな感じを持ちがちだが、江戸時代には、これも一つの職業として立派に成っていた。
しきたり、修行もあって中々厳しい世界のようだ。
役者を目指す男子の修行場、仕事でもある。
芸事のほか、身だしなみ、お風呂の入り方、話術、諸々のたしなみ、房事の鍛錬、等等の他、食べ物飲み物にも規制があるらしい。(生魚、焼き魚、芋類など体臭が強くなると言われていたものなどは、食べるのご法度だそうで・・・)
役者の修行でも厳しいのに、売春の修行もしないといけないし、
売買を取り仕切るマネージャーのようなものもいるらしい。
自由が全くなさそうだ。しかも年齢制限があって売れる時期はわずかだからハイスピードで売らないといけないので、身体も大変だ。

それを経験したゆえか、蘭陽は自由気ままを好む。
又、大酒をのみ、鰻や天麩羅、あらゆる食べたいものを自由気ままに食す。(春朗の家に朝から水饅頭を持ってきて『朝から水饅頭かよ!』といわれていた)

きらら舞いとは、蘭陽の得意技でトンボという芸を生かす技だ。
この【きらら舞い】を武器に役者のカムバックを志す。

春朗と知り合ったことで運が開けてくるが(春朗合わせ鏡で、奉納芝居に出たところを見初められるとか)同時に辛い過去とも対面してゆく。
そうなると、この男、実にうじうじしている。
春朗に、『いつもふりまわされる俺の気持ちが分かったか!』などと一喝されるくらい女々しい。

ストーリーも終盤に行くほど無理っぽいといおうか・・・
うざさが出てくる・・・(>_<)
エンドが暗くて最後の最後に気がめいる。

蘭陽というはつらつとしたキュートなキャラそのままに終わってほしかった。せめて希望を繋げてほしい。



posted by みずほ at 17:41| 大阪 ☀| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月21日

春朗合わせ鏡

本日は【だましえ歌麿】シリーズの続編【春朗合わせ鏡】

春朗合わせ鏡 (文春文庫)

春朗合わせ鏡 (文春文庫)

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/01/09
  • メディア: 文庫




いかにも浮世絵に造詣深いとされてる作者らしい、のりのりだ。

歴史は苦手なので、北斎は事実どんな人かは知らないが、一族がお庭番だとか、葛飾に妻子がいて、なかなかに家族思いだとか、本当はどんな人物だったのか・・・と考えてしまうのが時代小説で実在人物がキャラクターとして登場する楽しさだ。

なるほど、『こんな人なら素敵』と思わせる人物作りは、作者がきっとその人物が好きで友人のような気にならないと無理やわね。
後の北斎こと【春朗】はここではまだ、貧乏浮世絵師で単身江戸で頑張っている。しかし、色んなところから着々と名を売りつつ、千一の父左門の絵の手ほどきなどで出入りするうち仙波ファミリーとなった。

探偵的な手腕だけでなく、敵に一芝居売ったりと、なかなかお茶目なところがある。
ご禁制品を暴く際にはお大尽のご一行まで仕組んでの大芝居の筋書きを考えた。(その芝居の配役には前回【おこう紅暦】に登場したおこうの芸者時代の朋輩やばくれん時代の女友達達が大活躍して面白い)

また、春朗は顕微鏡のような目を持って絵を描く。
小さな小さな花一輪の拡大図や草につく小さな小さな虫を細かく描写し、左門を唸らせるシーンがある。
細かいところをどんどん見ていくと、今まで気に留めなかった小さい世界、や命に気づく。それを描いているうち、小さな世界にも必死の命の息遣いを魂で感じる・・・と、言うようなことを仰る、繊細ぶりである。

おこうが『曇りなき目』で世の中をみるなら、春朗は『緻密なる目』で世の中を見、悪に立ち向かうのだ。(かっこええ〜)

いやはや、本当に北斎と言う人がこうだったらいいのにな。そしたら、本当、浮世絵ファンになるかも。

今回のシリーズに、新たな仲間が加わった。
元陰間で役者上がりの女形美少年【蘭陽】は、なぜか春朗を慕い、あーじゃこじゃとくっついては春朗を振り回す。
ナイスガイ春朗がこのバイセクシャルで腕も立つ青年に振り回される様は面白い。春朗みたいなストイックなナイスガイは女と絡んでほしくないし、似合わんもんね!

キュートで楽しい時代小説は魅惑的キャラ【蘭陽】を迎えて、クライマックスに進む。次回も続編【蘭陽きらら舞い】の感想文です。
posted by みずほ at 18:33| 大阪 ☔| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月20日

おこう紅絵暦

続編まで読んだ。
良かった

このシリーズは最初、誠実正義ではあるがしがない十手持ちの仙波一之進を主役に事件を追ってゆく中で歌麿、北斎、後に妻となる柳橋芸者おこう、父親など魅力あるキャラクターとの係わり合いも面白く、鬼の平蔵ともやり合うシーンなど、なかなか男気小説ですかっとする。

武士であっても千一(千に一つの目こぼしが無いという意味から付いた渾名)は庶民派で一人間として町人も武士も区別ないところがヒーローらしくていい。悪人に対しては容赦ないところも男っぽい。

続編は、千一を取り巻く人たちを主役において話がすすむ。
話が終わる頃には別れ難くなったキャラクター達が、こういう形で再び合えるのが楽しい。きっと作者が自分のキャラクターともっといたかったんだろうと思う。

【おこう紅絵暦】は千一の妻で元柳橋芸者であり、更に昔はばくれん(今で言う不良少女だろう)という経歴の持ち主であるが、心は健やかで逞しく、澄んでいる。義父の左門が又、嫁を可愛がり、良き相談相手であり、理解者であるが、左門にとってのおこうも良き理解者として心を通わせているところが素敵だ。
左門と共に、おこうが事件をあばいてゆくが、それは千一のような男とは違う女性の優しさと、おこうの曇りない目によってなされてゆくので、話はハッピーエンドが多いところが本当に安心する。
事件を解決してゆく度に苦しい世の中を健気に生き抜く子供や、道をはずしそうな人達を救い、再出発に導くところも、男世界で主役をはるストーリーとは違う、本当の意味でのハッピーエンドがある。
こういうことは「女しか出来ない」のだと、女性に自信を持ってもらえる小説だ。
義父、左門が老いに悩み武士精神までも迷い苦しむ【迷い道】のストーリーは権力社会を生きる男性というものがいかにもろいかを物語っている。左門の友人の死という悲しい面もあったが、真実の道を見出し、又左門は男とて、武士としての心を取り戻し、強くなってゆくところに感動した。
ストーリーが進むにつれ、家族や仲間がどんどん増えてゆくところも心が暖まる。最初は男二人だけのうざい世界がどんどん明るく楽しいものに変わる。これもおこうという女性がいるからに他ならない。
世界を暖かく優しく明るいものに変える為には女性でなくては駄目だ。と、一女性としての自信を取り戻せる小説になった。
但し、それには澄んだ心と曇りない目が必要ということも心した次第である。


おこう紅絵暦 (文春文庫)

おこう紅絵暦 (文春文庫)

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/03/10
  • メディア: 文庫




次回は続編【春朗あわせ鏡】の読書感想文を書く
春朗は後に大成する葛飾北斎の売れない頃で、【おこう紅絵暦】では左門の絵の手ほどきをする人物として登場したが、探偵資質があるらしく、多々活躍した。本書は春朗を主役に事件を追う続編だ。春朗の実態や過去にも触れてゆくことになる。
posted by みずほ at 09:33| 大阪 ☔| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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