2009年06月28日

蘭陽きらら舞い

またまた【だましえ歌麿】シリーズから


蘭陽きらら舞

蘭陽きらら舞

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/02
  • メディア: 単行本




シリーズ3弾の【春朗あわせ鏡】ではエキセントリックなキャラクターで春朗との名コンビだった、元役者、陰間の蘭陽が主役です。

こういうキャラは人気でそうと思った。
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今回の蘭陽は役者をあきらめきれず、カムバックに奔走するのだが、その中で、またまた事件に巻き込まれていく。(自分からつっこんでいってますね。この人たちは)
その中で、それぞれの人とのふれ合いや、蘭陽の過去に触れていくわけだが、今回、この蘭陽あまり歯切れがよくない。
春朗を相手にするときはスパスパと切り込んでゆく癖、自分のこととなるとじめじめ悶々ナ悩む。
まぁ、それが人らしいといえばそうだが・・・

蘭陽は謎が多い。廃墟の豪壮な料亭をねぐらにし、おしゃれで衣装もち、仕事もせずにぶらぶらしているようだが、お金に困っている風もない。
『あたし』言葉の女形スタイル、優男風だが、喧嘩も強く、度胸もある。
どうやら、前老中の田沼意次の密偵のようなことをやっていたらしい。なんとなく顔も広い。

『強くなくちゃ身を守れない』という台詞から、これまでの厳しい人生を想像させる。

そもそも、陰間=男娼というとへろへろ、気っしょーみたいな感じを持ちがちだが、江戸時代には、これも一つの職業として立派に成っていた。
しきたり、修行もあって中々厳しい世界のようだ。
役者を目指す男子の修行場、仕事でもある。
芸事のほか、身だしなみ、お風呂の入り方、話術、諸々のたしなみ、房事の鍛錬、等等の他、食べ物飲み物にも規制があるらしい。(生魚、焼き魚、芋類など体臭が強くなると言われていたものなどは、食べるのご法度だそうで・・・)
役者の修行でも厳しいのに、売春の修行もしないといけないし、
売買を取り仕切るマネージャーのようなものもいるらしい。
自由が全くなさそうだ。しかも年齢制限があって売れる時期はわずかだからハイスピードで売らないといけないので、身体も大変だ。

それを経験したゆえか、蘭陽は自由気ままを好む。
又、大酒をのみ、鰻や天麩羅、あらゆる食べたいものを自由気ままに食す。(春朗の家に朝から水饅頭を持ってきて『朝から水饅頭かよ!』といわれていた)

きらら舞いとは、蘭陽の得意技でトンボという芸を生かす技だ。
この【きらら舞い】を武器に役者のカムバックを志す。

春朗と知り合ったことで運が開けてくるが(春朗合わせ鏡で、奉納芝居に出たところを見初められるとか)同時に辛い過去とも対面してゆく。
そうなると、この男、実にうじうじしている。
春朗に、『いつもふりまわされる俺の気持ちが分かったか!』などと一喝されるくらい女々しい。

ストーリーも終盤に行くほど無理っぽいといおうか・・・
うざさが出てくる・・・(>_<)
エンドが暗くて最後の最後に気がめいる。

蘭陽というはつらつとしたキュートなキャラそのままに終わってほしかった。せめて希望を繋げてほしい。



posted by みずほ at 17:41| 大阪 ☀| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月21日

春朗合わせ鏡

本日は【だましえ歌麿】シリーズの続編【春朗合わせ鏡】

春朗合わせ鏡 (文春文庫)

春朗合わせ鏡 (文春文庫)

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/01/09
  • メディア: 文庫




いかにも浮世絵に造詣深いとされてる作者らしい、のりのりだ。

歴史は苦手なので、北斎は事実どんな人かは知らないが、一族がお庭番だとか、葛飾に妻子がいて、なかなかに家族思いだとか、本当はどんな人物だったのか・・・と考えてしまうのが時代小説で実在人物がキャラクターとして登場する楽しさだ。

なるほど、『こんな人なら素敵』と思わせる人物作りは、作者がきっとその人物が好きで友人のような気にならないと無理やわね。
後の北斎こと【春朗】はここではまだ、貧乏浮世絵師で単身江戸で頑張っている。しかし、色んなところから着々と名を売りつつ、千一の父左門の絵の手ほどきなどで出入りするうち仙波ファミリーとなった。

探偵的な手腕だけでなく、敵に一芝居売ったりと、なかなかお茶目なところがある。
ご禁制品を暴く際にはお大尽のご一行まで仕組んでの大芝居の筋書きを考えた。(その芝居の配役には前回【おこう紅暦】に登場したおこうの芸者時代の朋輩やばくれん時代の女友達達が大活躍して面白い)

また、春朗は顕微鏡のような目を持って絵を描く。
小さな小さな花一輪の拡大図や草につく小さな小さな虫を細かく描写し、左門を唸らせるシーンがある。
細かいところをどんどん見ていくと、今まで気に留めなかった小さい世界、や命に気づく。それを描いているうち、小さな世界にも必死の命の息遣いを魂で感じる・・・と、言うようなことを仰る、繊細ぶりである。

おこうが『曇りなき目』で世の中をみるなら、春朗は『緻密なる目』で世の中を見、悪に立ち向かうのだ。(かっこええ〜)

いやはや、本当に北斎と言う人がこうだったらいいのにな。そしたら、本当、浮世絵ファンになるかも。

今回のシリーズに、新たな仲間が加わった。
元陰間で役者上がりの女形美少年【蘭陽】は、なぜか春朗を慕い、あーじゃこじゃとくっついては春朗を振り回す。
ナイスガイ春朗がこのバイセクシャルで腕も立つ青年に振り回される様は面白い。春朗みたいなストイックなナイスガイは女と絡んでほしくないし、似合わんもんね!

キュートで楽しい時代小説は魅惑的キャラ【蘭陽】を迎えて、クライマックスに進む。次回も続編【蘭陽きらら舞い】の感想文です。
posted by みずほ at 18:33| 大阪 ☔| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年06月20日

おこう紅絵暦

続編まで読んだ。
良かった

このシリーズは最初、誠実正義ではあるがしがない十手持ちの仙波一之進を主役に事件を追ってゆく中で歌麿、北斎、後に妻となる柳橋芸者おこう、父親など魅力あるキャラクターとの係わり合いも面白く、鬼の平蔵ともやり合うシーンなど、なかなか男気小説ですかっとする。

武士であっても千一(千に一つの目こぼしが無いという意味から付いた渾名)は庶民派で一人間として町人も武士も区別ないところがヒーローらしくていい。悪人に対しては容赦ないところも男っぽい。

続編は、千一を取り巻く人たちを主役において話がすすむ。
話が終わる頃には別れ難くなったキャラクター達が、こういう形で再び合えるのが楽しい。きっと作者が自分のキャラクターともっといたかったんだろうと思う。

【おこう紅絵暦】は千一の妻で元柳橋芸者であり、更に昔はばくれん(今で言う不良少女だろう)という経歴の持ち主であるが、心は健やかで逞しく、澄んでいる。義父の左門が又、嫁を可愛がり、良き相談相手であり、理解者であるが、左門にとってのおこうも良き理解者として心を通わせているところが素敵だ。
左門と共に、おこうが事件をあばいてゆくが、それは千一のような男とは違う女性の優しさと、おこうの曇りない目によってなされてゆくので、話はハッピーエンドが多いところが本当に安心する。
事件を解決してゆく度に苦しい世の中を健気に生き抜く子供や、道をはずしそうな人達を救い、再出発に導くところも、男世界で主役をはるストーリーとは違う、本当の意味でのハッピーエンドがある。
こういうことは「女しか出来ない」のだと、女性に自信を持ってもらえる小説だ。
義父、左門が老いに悩み武士精神までも迷い苦しむ【迷い道】のストーリーは権力社会を生きる男性というものがいかにもろいかを物語っている。左門の友人の死という悲しい面もあったが、真実の道を見出し、又左門は男とて、武士としての心を取り戻し、強くなってゆくところに感動した。
ストーリーが進むにつれ、家族や仲間がどんどん増えてゆくところも心が暖まる。最初は男二人だけのうざい世界がどんどん明るく楽しいものに変わる。これもおこうという女性がいるからに他ならない。
世界を暖かく優しく明るいものに変える為には女性でなくては駄目だ。と、一女性としての自信を取り戻せる小説になった。
但し、それには澄んだ心と曇りない目が必要ということも心した次第である。


おこう紅絵暦 (文春文庫)

おこう紅絵暦 (文春文庫)

  • 作者: 高橋 克彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/03/10
  • メディア: 文庫




次回は続編【春朗あわせ鏡】の読書感想文を書く
春朗は後に大成する葛飾北斎の売れない頃で、【おこう紅絵暦】では左門の絵の手ほどきをする人物として登場したが、探偵資質があるらしく、多々活躍した。本書は春朗を主役に事件を追う続編だ。春朗の実態や過去にも触れてゆくことになる。
posted by みずほ at 09:33| 大阪 ☔| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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